ハマダイブ
浜松市

保育園で実施する⾷農・⾷育 キッズブログラム「味噌作り を通して発酵を学ぶ」

れんりの⼦(愛管株式会社)×株式会社オリゼ

INTERVIEW

【保育園×麹菌】味噌作りを通じた食育で、子どもたちから親世代へ日本の食文化を広める(後編)

スタートアップ支援やオープンイノベーションの推進に取り組んでいる浜松市。浜松というフィールドから新しいアイデアやビジネスが次々と生まれることを目指し、社会課題などをテーマに浜松市企業とスタートアップの協業・連携を支援している。

今回は、保育園や飲食、農業、管工事など浜松市で多角経営を展開している愛菅株式会社から、保育園「れんりの子」園長の富田知可子氏と、「地球を発酵させる」をミッションに麹由来の発酵食品を提供するスタートアップ・株式会社オリゼの田力怜奈氏に、両社の取り組みを伺った後編をお届けする。

※前編はこちら

保育園「れんりの子」
園長

富田知可子氏

株式会社オリゼ

田力怜奈氏

五感をフルに活用した味噌作りと講話

2025年2月12日に実施した味噌作りの様子を教えてください。

富田:

当日は、年中組の子どもたちと朝から釜戸で大豆を茹でるところから味噌作りを始めました。収穫した時の大豆と水につけた後の大豆を見て、柔らかくなっていく様子や匂いの変化などを子どもたちが体感し、最終的には茹で上がった大豆を食べて、美味しいね、甘いね、といった会話をしました。

お昼に昨年作った味噌でお味噌汁を用意し、年中組と年長組の全員で食べました。その後にオリゼの田力さんから麹菌について話をしていただきました。

当日のお味噌汁は昨年の年中組(現在の年長組)が作った味噌ですか?

富田:

そうです。昨年、一歳上の子どもたちが作った味噌を味わい、自分たちが作った味噌もこんなふうに美味しくなるかなと話していましたよ。味噌作りの最中にも、昨年の味噌を味見したり、匂いを嗅いだり、色を比べたりと五感をフルに使っていました。

驚いたのは、田力さんが帰ったあとに、おやつで出したヨーグルトを見て、子どもたちが「乳酸菌だ!」と言ったこと。ちゃんとお話を聞いていたんだなと感心しました。

田力:

それは嬉しいですね。私も当日は朝から参加したのですが、子どもたちは登園するとじょうろを持って畑に行くんですよ。その姿が可愛らしかったですし、食べ物を畑で育てることが生活の一部になっていることに驚きました。

麹菌について、どのようなお話をしたのか教えてください。

田力:

「良い菌、悪い菌」をテーマにお話をしました。子どもたちがイメージする菌はバイキンや虫歯菌など悪い菌なので、外から帰ったら手洗いやうがいをして悪い菌を体の中に入れないようにするけれど、実は良い菌もいるんだよ、と。

今回の味噌作りで使った麹菌を“オリゼちゃん”というキャラクターにして、子どもたちが視覚的にわかりやすいようエプロンシアターを活用しながら伝えました。

子どもたちの反応はどうでしたか?

田力:

保育園で普段から食育をされているからか、すごく興味を持ってまっすぐに話を聞いてくれたのが印象的でした。問いかけに対するリアクションも良く、話す側としても嬉しかったですね。

子どもたちでも理解できた、体に良い菌

味噌作りから数日が経ち、子どもたちの変化や親御さんからの反響はありましたか?

富田:

子どもたちは味噌の変化を毎日見たがります(笑)。まだ数日なので変化はほとんどないのですが「ちょっと色が変わってきた気がする!」などと喜んでいますよ。発酵食品に対して良いイメージを持ってくれたようで、保護者の方からは「家で味噌作りや良い菌の話をしてくれた」との報告が多数ありました。

田力さんがわかりやすくお話ししてくれて、今までは「菌は悪いものだ」と思っていた子どもたちも、体に良い菌を入れると悪い菌をやっつけてくれるんだ、と理解してくれたように感じています。

今回、連携して良かったことを教えてください。

富田:

味噌作りは3年目になりますが、今までは日本の食文化を伝えることを目的に、自分たちが作った大豆を茹でて、麹と塩を混ぜると味噌ができるよとしか伝えていませんでした。つまり、麹が菌であるというところまで掘り下げても難しいだろうと思っていたんですね。

でも、今回田力さんに麹菌の話をしていただいたことで、深い学びにつながったのではないかと思います。もちろん、全てを理解したわけではありませんが、単語が頭に残っていたら(この言葉、知ってる!)と自信につながると思うんです。今回はとても良い取り組みになったと思っているので、来年もまたご一緒したいです。

田力:

もちろんです。食育には食文化を学ぶことも含まれていて、れんりの子の子どもたちが食文化を未来につないでいく担い手になっているのはとても素晴らしいと思いました。生活の知恵といいますか、食文化としての麹菌や、麹菌の働きを少しでも感じてもらえていたら、意義があったと思っています。

一度ではなく二度繰り返すことで深い学びに

今後の展望と、それぞれに描いている未来を教えてください。

富田:

れんりの子は年中組と年長組の二年齢保育で、初めてのことを一度経験して終わりにするのではなく、二回繰り返すことで深い学びにつなげています。

今回、味噌作りをして麹菌について話を聞いた年中組は、来年自分たちで作った味噌を食べた後にまた麹菌のお話を聞く機会があれば、より理解が深まると思うので、一度限りの連携ではなく継続していきたいと思っています。

保育園としては開園してから4年目になり、農作物を作って調理・加工して食べる食育が、考える力や忍耐力、責任感、努力、協調性などいろんなことにつながることがわかってきました。

野菜作りから始まった食育は、魚や鶏の命をいただくことにも広がっていますし、最近では肥料作りにも挑戦しています。今後も視野を広げて、食べることにとどまらない食育に挑戦したいと思っています。

小学校に進学したとき、周りの子と差がついてそうですね。

富田:

そうかもしれないですね。いろんなことに興味や疑問を持ち、実際に自分でやってみて、成功したり失敗したりなどの経験をたくさん積んで卒園するので、そうした経験が生きるといいなと思っています。

麹の甘味料で味覚形成に貢献

田力さんはいかがでしょう?

田力:

これまで保育園との関わりは、商品を卸すことくらいでしたが、今回初めて保育園と連携して味噌作りや麹菌の講話をさせてもらったことで、子どもたちに話をまっすぐ聞く姿勢があることや、大人でも難しい発酵の話をリアクション良く聞いてくれることなど、とても多くの気づきを得られました。

オリゼでは、麹が持つ甘さや旨みを生かした甘味料を砂糖の代替商品として売り出しているので、今後は砂糖の代わりに麹の甘味料を使ったおやつ作りやワークショップができればいいなと思っています。

富田:

麹の甘味料のワークショップは実施したいですね。園で作った無農薬野菜は保護者の方がお迎えに来た際に購入できるようにしているので、そこにオリゼの商品を並べるのも良いなと思っています。砂糖ではない甘味料を使いたい保護者の方は少なくないと思いますよ。

田力:

いいですね。砂糖がたくさん入った飲み物やお菓子ではなく、麹による自然本来の甘みを感じてもらうのは味覚形成の良い機会になるかもしれません。

それは日常的にwin-winな連携ですね。子どもたちが作った野菜も人気がありそうです。

富田:

親御さんには喜んで買っていただいています。子どもたちが収穫した梅も、梅干しのレシピをつけて置いておくと、皆さん購入されるんです。「子どもは梅干しを漬けたけれど、私は漬けたことがないんです」という方が多いので、今後も子どもから親世代に日本の食文化を発信する保育園として成長していきたいです。

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